2020年05月07日 12:00
毎年4月、中国ではモーターショーが北京と上海で隔年交互開催され、いずれも近年約80万人の入場者を記録してきた。
ただし、2020年4月21〜30日に催される予定だった第16回北京モーターショー「オートチャイナ2020」は、新型コロナウイルスの影響で9月26日〜10月5日に延期された。
本稿では筆者が2013年から2019年の7回にわたって現地で取材したショー展示車を回顧する。それによって、中国の自動車が近い過去に、どう変化してきたかを示したい。
第1回は「“何か”に似ていた車たち」と題し、他メーカーのデザインを模倣・参考したことを匂わせる中国ブランド車およびコンセプトカーを収集した(以下、車両のデビュー年と展示年は必ずしも一致していない)。
●華泰・宝利格(上海モーターショー2013):明らかに初代ポルシェ『カイエン』を意識したデザインで、当時物議を醸した。
●東風・猛士(上海モーターショー2013):人民解放軍などが使用する軍用車両と、民間用の双方がある。ハンヴィーとトヨタ『メガクルーザー』を参考にしたのは疑う余地もない。
●衆泰Z100(上海モーターショー2013):各ピラーの形状をみれば、スズキ『アルト』欧州仕様の模倣であることが一目で確認できる。
●一汽・一汽校車(上海モーターショー2013):現ダイムラーグループの1ブランドである米国フレイトライナーのバスを参考にしたと思われる。ただし実際には、国土の広大さからして、中国でもこのサイズの通園バスが地域によっては実用的であることも事実だろう。
●福田MPX蒙派克S(上海モーターショー2013):北汽系の福田汽車は、以前から4代目トヨタ『ハイエース』風の『風景(VIEW)』を生産していたが、本家が5代目にバトンタッチすると、ふたたびそれを思わせるデザインを採り入れた。
●華晨・中華H330(上海モーターショー2013):華晨(ブリリアンス)は2000年代、合弁先であるBMWのキドニーグリル風のフロントフェイスを積極採用していた時期があった。だが、この中華H330は、グリルだけでなく全体のフォルムもビュイックを想起させる。
●同済汽車設計研究院・概念車(上海モーターショー2013):同済大学の関連機関を一堂に集めた展示だった。フロントグリル、ドアからリアフェンダーにかけてのプレスは、2代目アルファロメオ『スパイダー』を手本にしたのはたしかだろう。
●東風1号(上海モーターショー2013):プラットフォームは合弁先であるグループPSAの設計でありながら、フォルクスワーゲン『フェートン』を意識したと思われる、後席重視の重厚なデザインが与えられている。
●北汽Eシリーズ(北京モーターショー2014):初代メルセデスベンツ『Bクラス(W245)』かと大半の人が思い込んだに違いないデザイン。実は内部のダッシュボードも酷似しているが、関係はない。
●北汽コンセプト900(北京モーターショー2014):初代メルセデスベンツ『CLS』を意識した後部の造形。前述のEシリーズしかり、デザインとは別に、北汽は長年ダイムラーと合弁関係があることも事実で、2019年にはダイムラー株の取得も開始した。
●北汽・北斗星X5(北京モーターショー2014):1.4リットルのシティカー。初代スズキ『ワゴンR』のアイコンであったプレスドアを取り入れながら、写真ではわかりづらいが、後部には初代ダイハツ『テリオス』風のテールランプ内蔵Cピラーをもつ。2020年現在もカタログに載り続けている。
●北汽・勇士(北京モーターショー2014):軍用と民生版がある。4WDを訴求するのに“例のグリル”は最も手っとり早いのだろう。2リットル、2.4リットルのガソリン版、および2.5リットル・ディーゼルが存在する。
●蘇州益高電動車イーグル・キャリー(上海モーターショー2015):益高電動車は、ゴルフカート製造から発展したEVメーカー。モティーフが、フェラーリ+ポルシェ(バッジも)+アルピーヌ『A110』であることは明らか。
●〓威ヴィジョンR(北京モーターショー2016):ゴールドのボディカラーも含め、見た瞬間フォルクスワーゲンが前年のジュネーブモーターショー2015で公開した『スポーツクーペ・コンセプトGTE』を思い出した欧州自動車関係者は少なくないだろう。〓=草冠のしたにワ、さらにその下に木
●長安Jiliu(上海モーターショー2017):スピンドル型グリル、テールランプのサイドへの回り込ませ方は、残念ながらレクサスなくしては発想できなかっただろう。
●衆泰SR9(上海モーターショー2017):冒頭の宝利格がカイエン風だったのに対し、こちらは『マカン』風。衆泰の模範は、常にシュトゥットガルトにあるようだ。フロントフード上のZotieバッジの書体さえも。
●衆泰T700(上海モーターショー2017):ただし、その衆泰のトップ・オブ・ザ・レインジは、フローティングルーフを含むレンジローバー『イヴォーク』の意匠を巧みに取り入れたこのモデルである。
●KDCピュア・エレクトリック・シティスポーツカー(北京モーターショー2018):マクラーレン『570S』にフォルムだけでなくボディカラーまで近づけようとしているのには恐れ入る。
●陸風・道遥(上海モーターショー2019):ロードクリアランス、天地を絞ったサイド、そしてリアウィンドー周辺の造形は、メルセデスベンツ『GLA』を意識したことが容易にわかる。
●博郡 iv6(上海モーターショー2019):2016年設立の新興EVメーカーは、テスラ『モデル3』を師としたと考えられる。それよりも、立派なラジエターグリルが無い自動車デザインが、どこまで中国市場で受け入れられるかが興味深い。
●国机智駿(ZEDRIV)GT3(上海モーターショー2019):こちらも新興EVメーカー。5本スポークのホイールはじめ、デザインはナロー時代のポルシェ『911』を匂わせる。スペックは航続260km、最高速160km/hと控えめである。
●東風『シェアリングバン・コンセプト』:2018年のCESでトヨタが発表した『e-Palette』に酷似する。トヨタがタイヤを四隅に追いやって安定感を醸成しているのに対し、東風はより内側にタイヤを配しているので、サイドウィンドー形状とともに下窄まり感が激しい。
過去に各国メディアで報じられてきたとおり、中国モーターショーには米欧日のデザインを模倣したと思われる車両が頻繁に登場し、そのたび議論を巻き起こした。模倣される側のデザイナーとしては、フォルムはおろか、ウェストラインの1ミリメートルを修正しながら最適解を追求した結果到達したオリジナルだ。それだけに、彼らの悔しさが偲ばれる。
ハーグ協定のジュネーブ改正協定に基づく「意匠の国際登録制度」に、いまだ中国が加入していないのも歯がゆいところだろう。さらに、北京汽車とダイムラーのようにグループに合弁会社があったり、資本関係が進むと、さらにデサイン模倣を指摘しにくくなる。
いっぽうで、自動車史において、デザインの模倣がたびたび行われてきたことも事実だ。
1924年のオペル『ラウプフロッシュ』はシトロエン『5CV』のデザインを参考にしていた。1936年『トヨダAA型』はデソート『エアフロー』の流線型から学習したのは有名な史実である。1959年メルセデスベンツ『Sクラス(W111)』のテールフィンは、当時同社にとって最大の輸出市場であったアメリカのトレンドを取り入れたものであった。
今回取り上げた過去数年は、現地系中国ブランドがデザインを参考にしながら、自らの解釈を模索する、いわば学習の最終段階であったといえる。模倣の是非は、次の段階でいかに独自の解釈を高度に織り込めるかで決まる。それは美術の世界において、先人の遺した作品を足がかりに新たな表現ができるか、それとも贋作に留まるかというのと同じである。
次回以降紹介するように、すでに中国には、外国のデザイン会社や外国人デザイナーの力を借り、模倣から脱してオリジナル性を真剣に模索しているブランドがある。それだけに、一部メーカーによる志なき模倣デザインによって、中国車全体の評価が落ちることは極めて残念なのである。
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