
「海外」や「外国」という言葉は注意が必要だ。「対日本」という軸を置いて、「その他大勢」を一括りにしようとしても、その他全ての国に共通する事象や傾向など、「日本ではない国」という点以外は、ほぼ皆無だからだ。それでも、多くの国には存在しない、実に日本的な事象として「ワイドショー」が挙げられる。 取り扱うテーマが時事問題から芸能ネタまで「幅広い」という意味なのだろうが、日本を知らない外国人には決して通じない和製英語の一つで、英語として通じないどころか、ニーズや存在意義さえ理解されにくい、国際的には摩訶不思議な番組だろう。ワイドショーという表現はもはや正式には使われず「情報番組」と呼ぶのが正しいようだが、今でも実際に使われており、死語とは言い難い。 そんな中、「ワイドショーを止めてほしいです。それだけでいいです。それだけで頑張れそうです」という医療従事者の万感のこもった心の叫びをSNSで見かけた。 前回触れたように、日本は新型コロナ禍に際し、医療関係者をはじめとする利害関係者と国民の自助努力のお陰で、医療崩壊を起こさず、医師による究極の命の選択(トリアージュ)をせずに済んだ。世界的に見てもこれは実に素晴らしい事実であり、この点においては、恐怖を煽りつつも自粛促進に貢献したワイドショーが果たした役割は小さくなかったと思う。
「世間様の思い・ご意見」という虚像
では、前出の医療関係者のワイドショーに対する侮蔑・嫌悪は何を表象しているのか? それは、結局のところ、ワイドショーには正よりも負の側面がはるかに大きいということであろう。多くの国では、病気がテーマであれば、その病気の専門家がコメンテーターとして呼ばれるのが常で、たとえ医者であっても、その病気の専門家でなければ呼ばれることはない。「コメンテーター」と呼ばれるタレントその他の、予定調和的な感想を聞いても多くの先進国の視聴者は満足しないだろう。 ところが、日本の場合(もちろん個別論では真摯に報道の重要性と対峙しているテレビマンもいるはずだが)、総論で言えば、ワイドショーを作るテレビ局側の狙いは、正確で高品質な情報の発信よりも、視聴率アップに重きを置いているように見受けられる。専門性に焦点をあてても視聴率はとれないと考えているのではないか。 大半の視聴者と同じ目線で、大半の視聴者が感じていそうなことをごくフツーに口にできる人、テレビ局側の振付師の思惑通りに、幅広いテーマについて幅広い意見を当たり障りなくコメントできるゼネラリスト、そういう使い勝手のよい人たちを「コメンテーター」としてワイドショーに出演させたいのであろう。 ただ、考えてみると、視聴者は実に多様であり、「大半の視聴者の思い」など本当に存在しうるのか? 本当のところ、「大半の視聴者」、つまり「世間様」の実態はないに等しいのではないか。「世間様の思い・ご意見」(世論)という虚像をテレビ局が作り上げ、それに合わせてコメンテーターの配役をおこない、彼らの口をとおして発信させ、視聴者に共感を覚えたかのように錯覚させることが目的、といったら言い過ぎだろうか。
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June 16, 2020 at 04:24PM
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