総再生回数１万４７００回以上。おたる水族館（北海道小樽市）の公式ユーチューブチャンネルが昨年公開した中で、群を抜いて見られた動画がある。４月２９日に公開された無観客のペンギンショーだ。
ショーの最中、ペンギンたちが飼育員の指示を無視することは日常茶飯事。無観客ショーでも浮き島を渡らない、滑り台は滑らずに歩く。前半のシーソーやハードル跳びは難なくこなしたものの、後半に入ると、飼育員の指示をまったく聞かなくなった。最終種目、高さ１メートルからの飛び込み台も、一羽も階段すら上ろうとせず、そのまま終了。しかし、この自由気ままさが人気の秘密だ。
ユーチューブには「無理強いしないのんびりした感じがいい」などと好意的なコメントが相次ぐ。飼育員の徳山航さん（３７）は「やるかやらないかはペンギンの自由。ショーの目的はペンギンたちの本来の姿を見てもらうこと」と話す。
同水族館は２０年以上前にペンギンショーを始めた。散歩を公開する水族館や動物園は多いが、「ショーをする施設は他に聞いたことない」（徳山さん）という。以前は客席から「ちゃんとやれ」などと声が飛んだこともあったが、数年前に来園者らがショーの様子を撮影した動画をＳＮＳに投稿すると、「言うことを聞かないペンギンショー」としてかえって話題に。全国放送のテレビ番組でも紹介され、最近では「水族館に来たらペンギンショーを見ないと帰れないと言ってくれるお客さんもいる」（徳山さん）ほど、水族館の名物になった。
出演するフンボルトペンギンは南米・チリなどの暖かい地域に生息し、実は北海道の厳しい寒さが苦手。２月２８日までの冬の営業期間はフンボルトペンギンがいる海獣公園は閉鎖され、ショーも休み。生のショーは３月下旬までお預けだが、徳山さんは「個体ごとに顔も得意種目も異なる。ペンギンたちの表情にも注目してほしい」と魅力をＰＲする。【今井美津子】
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