コロナ禍がまだまだ収束しないなか、2021年も4月21日から上海モーターショーが開催される。2020年は主要国市場で自動車販売台数が激減(EUで23.7%減、米国で14.7%減、日本で11.5%減)した一方で、中国市場は1.9%減に踏みとどまった。新エネ車普及もさらに加速する中国におけるモーターショーでの動きがますます注目される。今回は、コロナ禍で会場を訪問できない多くの方向けに動画を通じてショーの様子をお届けしたい。その際、中国市場での動きとして特に下記4つの点に着目したい。
上海モーターショーの詳細について、4月27日開催上海モーターショー2021~中国市場の電動化最前線~のオンラインセミナーで程塚氏が講演する。
1つめは低価格EVの動向だ。昨年8月に販売開始された上汽通用五菱の「宏光MINI」は日本円で50万円を切る圧倒的な低価格で、半年未満の販売期間で2020年の世界EV販売台数2位にランクインした(1位はTESLAの「モデル3」)。地方都市向けとの見込みもあったようだが上海や北京など大都市の若年層からも支持されているという。「宏光MINI」は市場を切り拓いた成功例だが、単発の動きではないと思われる。その背景には、年間数百万台規模といわれるA00未満の四輪車・三輪車という中国独特の市場があると考えられる。そのため今後も低価格のEVが続々と出現することが想定される。2020年の「宏光MINI」の成功を受け、他社がどのような製品を見せるのかに注目したい。
2つめはインフォテインメント(IVI)だ。2020年の中国の自動車市場は新興EVブランドの躍進が目立った。最も売れたのは米国発のTESLAだが、中国勢としてもNIO(蔚来汽車)を筆頭に、理想智造、威馬汽車、小鵬汽車などが挙げられる。これらのブランドに共通するのは、車載ディスプレイなどHMI機器の高度化と、その機器を通じて提供される様々なIVIだ。例えばNIOは、100種類程度の表情を持つAIスピーカーを搭載しているが、この表情に独自のノウハウがありクルマと人のコミュニケーションを円滑にしている。新興勢だけでなく、例えばBYDはXR技術を活用したディスプレイを搭載している。今後さらなるIVIの進化が期待されるなか、今回のショーでの中国ならではの動きに注目したい。
3つめは車電分離やBaaSの動向だ。BaaSはBattery as a Serviceの略で、自動車と電池を分離し、電池供給をサービスとして提供するものだ。現在、中国では様々なメーカーが電池交換設備の高度化に熱を上げている。電池交換設備とはガレージ程度の大きさで、その中で自動車をジャッキアップして底面の電池を無人で交換する設備のことだ。昨年から大都市を中心に普及が始まっている。その高度化の指標とされるのが電池交換に要する時間で、上海汽車は20秒で交換する設備を開発したと発表している。2019年の上海モーターショーではNIOが3分で電池交換する設備を展示し注目を集めていたが、このような設備がBaaSの起爆剤になると想定されるなか、今回はどのような展示があるか注目したい。
4つめはHVに対する各メーカーのスタンスだ。昨年10月、中国の汽車工程学会は「省能与新能源汽車技術路線図2.0(省エネ・新エネ車技術ロードマップ2.0)」を発表した。新エネ車比率を2025年に20%、2035年には50%以上にするなどEVやFCVが注目されるが、一方でHVに関しては欧州諸国のように禁止するのではなく、2025年にはガソリン車市場で50%(新エネ車が20%なのでガソリン車は80%となり、HVが自動車市場全体に占める割合は40%となる)、2035年には100%(同50%)という目標を設定した。4~5年後には40%となるため急速な変化が見込まれる。今後、政府による各種規制もこの目標を達成するために設計されると想定されるなか、各社の対応に注目したい。
今回のセミナーでは、上記の視点でショーを分析したい。もちろん、ショーなので何らかのサプライズもあるかもしれないし、会場全体の雰囲気や人々の様子もショーを構成する重要な要素だ。状況に応じて柔軟に、一方で想定としては上記の観点などからの示唆抽出を試みたい。多くの方が現地に行けないなかで、動画を通じての気づきを提供できればと思う。
程塚氏が、上海モーターショーをレポートするオンラインセミナーは、4月27日開催上海モーターショー2021~中国市場の電動化最前線~。
からの記事と詳細 ( 上海モーターショー2021~注目すべきポイント~…日本総合研究所 創発戦略センター シニアマネジャー 程塚正史氏 - レスポンス )
https://ift.tt/3cBdb78
No comments:
Post a Comment