台風19号は太平洋上で大型に発達し、暖かい海域を北上して勢力を維持しながら日本に上陸した。気象庁によると、雲が本州の半分を覆うほどの大きさで、特に北側の部分が発達し、日本に上陸する前から雨を降らせた。広範囲で大雨となり、河川の下流だけでなく上流でも増水したことで、雨のピークを過ぎた後も各地で河川の氾濫が相次いだ。
中でも、堤防が決壊した千曲川では、上流部にある長野県上田市や佐久市などで平年の10月1か月に降る雨の2倍以上の降水量を観測した。
国土交通省北陸地方整備局によると、同局が管理する長野県内の区間では、1983年9月に起きた戦後最大の洪水に耐えられるよう、2014年策定の計画に基づき、30年かけて堤防の整備などが進められていた。本流の決壊は1983年以来という。
計画では、堤防が決壊した長野市穂保地区から約7キロ・メートル下流の立ヶ花地点で、最大毎秒7300立方メートルの流量を想定していた。同局の岡本弘基・河川調査官は「今回の流量は83年の洪水を上回るとみられる」と話す。穂保地区の堤防の整備は完了していたが、河床を深くする掘削は未実施だった。
穂保地区を本社ヘリで上空から調査した東京理科大の二瓶泰雄教授(河川工学)は、「下流側に川幅が狭いところがあり、その手前で水の逃げ場がなくなって決壊に至った可能性がある」と分析した。その上で、「千曲川に流れ込む支流も氾濫している。断続的な大雨で川全体の水位が上昇し、広域で浸水したのだろう」と話した。
浸水域は、2018年の西日本豪雨で被害にあった岡山県倉敷市真備町と同程度の約1200ヘクタールに上ると推定した。二瓶教授は「全国で想定を上回る洪水が頻発している。同じような水害はどこで起きても不思議ではない」と注意を促した。
2019-10-13 12:19:00Z
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