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Thursday, March 26, 2020

ショー中止の「東コレ」 デザイナーらが工夫する新しい発表スタイルとは - https://ift.tt/2KYtf1P

サクラは咲いたのに、人出はまばら。新型コロナウイルスの感染の広がりを少しでも防ぐためには仕方がないとしても、どこか寂しい。そんな中で、今月中旬に開かれる東京コレクション(楽天ファッションウィーク東京)も中止になった。ミラノやパリなど欧米のコレクションは、感染拡大を迎える前に、タッチの差でほぼ例年通りの形で開かれた。それに対して、東京発のブランドはどんな形で新作を発表しようとしたか?

東京コレクションの中止は、2011年3月の東日本大震災直後の時にもあった。華やかな催しは地震や津波の被災地域の人たちがいる中、ふさわしくないとの理由だったが、ウイルスが引き起こす疫病が原因になったのは初めてのことだ。

2月末から3月はじめに、中止を早々と決めたブランドも多かった。今シーズンで117回目と最も長く、毎回欠かさずに新作を東京で発表してきたユキ・トリイは3月2日、東京・恵比寿のガーデンホールで19日に予定していたショー開催を、ブランドのホームページとインスタグラムをネット配信すると発表した。コロナウイルスの感染拡大が予想される中で、健康と安全への配慮だった。

そして今回の新作は、実用的な「大人のフェミニンスタイル」がテーマ。このブランド独特の豊富な素材と、美しい配色のプリント柄、ニット、ジャージー、布帛(ふはく)などを駆使しての、自由で楽しいミックス感覚が改めて新鮮に思える。

ショー中止の「東コレ」 デザイナーらが工夫する新しい発表スタイルとは

ユキ・トリイ 2020-21年秋冬コレクション

2月19日にショー中止、ネット配信を発表したタエ・アシダは、さらに5月中旬までにイメージビジュアル動画も配信する予定。新作は「Double Amplitude」(二重振幅)がテーマで、たとえば温かさと冷たさといった相反する要素を同じ服の中で色と素材で表現して、そこに生まれる2つの振幅(響き合い)を期待しようとの試みだ。

ショー中止の「東コレ」 デザイナーらが工夫する新しい発表スタイルとは

タエ・アシダ 2020-21年秋冬コレクション

2シーズン前からメンズも発表していて(今回はレディース41体、メンズ12体)、それも二重振幅することで、ジェンダーや多様性といったことの新しい表現になっているようにも思える。「デザインの発想はコロナウイルス騒動よりずっと前だった。でも、強くて楽しい表現をとの狙いが、結果的には少しは役に立てることになればうれしい」とデザイナーの芦田多恵。

また、ヒロココシノや、実力派中堅ブランドの代表格ともいえるハイクは、無観客でショーを開き動画配信で新作を発表した。

ハイクは「服飾の歴史と遺産を自らの感性で独自に進化させる」とのコンセプトで、気になって思い浮かんだ過去の服に、今の感覚で鋭い表現を付け加えるという手法を取り続けている。そうすることで、今につながる過去の大切なものが呼び戻されて、今と溶け合って未来につながっていく。いわば過去・現在・未来という3つの時間が重なって同時に進む中で生まれる創造の試み、ということなのかもしれない。

今回は、たとえば1950年代のフランス軍医士官のコート、80年代のアメリカ陸軍医の外科手術用ガウンや海軍のデッキ用ジャケットなどをイメージ源にして、シンプルだが力強い感覚で再デザインした服に作り変えた。

ショー中止の「東コレ」 デザイナーらが工夫する新しい発表スタイルとは

ハイク 2020-21年秋冬コレクション

若手のマラミュートは、インスタグラムの「ストーリーズ」で、ショーの予定だった3月18日から毎日新作をアップしている。今回のテーマは「One’s Garden」(一人の庭)。人工的な光景が広がる都会の片隅や家の小さな庭で、自分で設計を工夫して、手をかけて作っていく、というイメージなのだという。

このブランドの独特なニット技法や新たな質感のボンディング素材などを使い、日常的で現実感のある表現になっている。そしてそれが、不確かな未来に向けて生きていくための、確かな意志を示しているのだとも受け取れる。

ショー中止の「東コレ」 デザイナーらが工夫する新しい発表スタイルとは

マラミュート 2020-21年秋冬コレクション

それぞれデザイナーの年齢や表現の仕方が異なる4つのブランドだが、新作の発想の根にあるものは、底でつながっているような気がする。新型コロナウイルスの拡大は、グローバル化が果てしなく続く今の状況への漠然としながらも奥深い不安の広がりを象徴しているようにも思える。

中島みゆきの「世情」という歌の中で、〝時の流れを止めて 変わらない夢を見たがる者たちと 戦うため〟というフレーズがあったのを思い出す。ファッションもいま、コロナウイルスと同じように、グローバル化という終わりのない夢を終わらせる道を示そうとする、シュプレヒコールの波になろうとしているのかもしれない。

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    PROFILE

    上間常正

    ジャーナリスト、ファッション研究者。1972年、東京大学文学部社会学科卒、朝日新聞社入社。記者生活の後半は学芸部(現・文化くらし報道部)で主にファッションを担当。パリやミラノなどの海外コレクションや東京コレクションのほか、ファッション全般を取材。2007年に朝日新聞社退社、文化学園大学・大学院特任教授(2019年3月まで)としてファッション研究に携わる。現在はフリーの立場で活動を続けている。

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