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Sunday, May 10, 2020

社説 ウイルスの起源 国際連携で科学的調査を - 信濃毎日新聞

 世界で約28万人もの死者を出している新型コロナウイルスは、いつ、どこからやってきたのか。なぜ、地球規模で拡大したのか。

 この疑問と責任の所在を巡って米中が激しく対立している。世界保健機関(WHO)を巻き込み、収拾の見通しもない。

 両国の思惑にかかわらず、この疑問は解いておく必要がある。人類と野生動物との関係を見直し、危機の兆候を2度と見逃さないためだ。自国主義を超えた連携によって科学的な調査と検証を重ね、教訓を共有すべきである。

 ウイルスは人為的に作られたものでなく、自然起源だとの見解をWHOは示している。中国のコウモリのウイルスが別の哺乳類を経て人に感染するようになった、と考えられている。

 感染は野生動物を扱う海鮮市場から始まったとの見方がある。米国は武漢のウイルス研究所から流出した疑惑を強調している。

 真相に近づくには、まず中国が努力すべきだ。研究所の立ち入りを含め、国際調査を長期かつオープンに受け入れねばならない。研究内容や運営実態、海鮮市場の環境、初期段階の患者、医療・行政関係者の情報などが不可欠だ。

 米政権に反発して「証拠が出せていない」と居直るのではなく、国際的な検証に全面協力して情報を積極的に開示すればよい。

 米政権は情報機関の分析を中心に中国の隠蔽(いんぺい)やミス、WHOとの癒着を結論づける構えのようだ。

 米英など5カ国の機密情報共有の枠組みでは、研究所からの流出の可能性は「極めて低い」との見方が広がっているという。

 それでもポンペオ国務長官は研究所起源の証拠が「多くある」と主張する。大統領選を意識した印象操作でないなら、具体的な証拠を早急に示さねばならない。調査すべき重要事項である。

 調査は米中と距離のある欧州が主導し、WHOが専門家を派遣するのが現実的だろう。WHOを批判する米国が賛同しなくても、中国が受け入れれば可能だ。

 今月、欧州連合(EU)と英仏独、イタリア、日本などがネット上でイベントを行い、ワクチン開発加速のための資金を集めた。WHOへの支援を表明し、米マイクロソフト創業者ビル・ゲイツ氏らの財団の協力も得て廉価なワクチンの開発を目指している。

 こうした行動と枠組みを調査実現への一歩にしたい。途上国の感染拡大が懸念される今、国際連携を停滞させている米中の影響から離れなければ支援も進まない。

(5月11日)

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