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Sunday, July 12, 2020

パペット人形のパリコレ珍道中?――ファッションショーの光と陰に焦点を当てたミハラヤスヒロ - Fashionsnap.com

「メゾン ミハラヤスヒロ」コレクション動画より

「メゾン ミハラヤスヒロ」コレクション動画より

 ファッションショーというものは、膨大な人が関わって作り上げられる。デザイナーなどのメゾン側はもちろん、プレス、バイヤー、編集者、ジャーナリスト、スナップカメラマン、セレブ目当ての一般の観客......その誰もが欠かせない"共犯者"だ。「メゾン ミハラヤスヒロ(Maison MIHARA YASUHIRO)」は、そんなパリコレの華やかで悲哀に満ちた群像劇を、アトリエで手作りしたというパペット人形と人間のモデルが登場するリアルなファッションショーとを組み合わせた映像で表現した。そこにはどんな意図があるのだろうか?

(文:ファッションジャーナリスト 増田海治郎

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 ソバージュ頭のパペット人形(名前はトニー)が、寝心地の良さそうなベッドで爆睡している。目覚まし時計に叩き起こされた彼は、歯を磨いて朝食を食べて、服に着替えて外に出る。髪型もさることながら、ドット柄のタイを緩やかに締めた服装もなかなか洒落ている。まるでパリコレを闊歩するみたいだな......と思ったら、舞台は唐突に日本からパリへワープする。仲間と落ち合ってたどり着いたのは、メゾン・ミハラヤスヒロのパリコレ会場。スナップされているインフルエンサーを横目にプレスの列に並んで、おっかない顔をしたプレスに招待状を見せるも、えっ、名前がないから入れない?一瞬怯むも、バッテンを付けられたのになぜか中に入れてもらえた。ふー、ひと安心。あっ、有名人だ!トニーはすかさずiPhoneを取り出してセルフィーを撮ってフィルターで加工してSNSにアップするのであった......。


 こんな3分30秒のパペット人形によるパリコレ珍道中の後、デジタルショーは幕を開ける。人間のモデルの顔はタブレットのような四角いアニメーションで隠されていて、無機質な印象だ。テーマは"MORE OR LESS"。

人間は完璧を求め外見も内面も均整をとることに躍起だ。

人間が完璧になるとするほど、つまらなく、そこからは美を見出せない。

多少なりとも、いびつで歪んでいるほうが美しい、と僕は思う。

非現実の世界。ファッションとは、しょせん信憑性のないものだ。

不条理。

不均衡。

僕のファッション哲学。それは喜劇とも人形劇とも同じである。

(コレクションノートより)

 ドッキングと再構築というメゾン ミハラヤスヒロの十八番は、さらなる進化を遂げている。ほぼ2着を前後でドッキングしたブルゾンや背中を3本の袖で再構築したシャツは、荒々しくも繊細で若々しい。肩が前のめりになった独特のシルエットは、袖とアームホールの位置をズラすことで表現。ファーストルックのオーバサイズのスーツが、この手法を取り入れた分かりやすい例だ。パーツをつまむことで大きいものを小さくする"リサイズ"と呼ばれるテクニックも取り入れている。

 色のコントラストが美しいミリタリージャケットは、縫製した後に特殊な方法でスプレーを吹き付けたもの。大人気の粘土で造形したソールが特徴のスニーカーは、1970〜80年代のバスケットボールシューズにインスパイアされた「BLAKEY」が新登場。既存の3型も、服に合わせた加工を加えることでアップデートしている。

 ショーのフィナーレでは、パペット人形たちが再登場する。会場が暗転して、オレンジ色のつなぎを着た三原に扮したパペット人形の顔がクローズアップされる。その顔はなんとも複雑な憂いのある表情をしている。数百人の前で自分の内側をさらけ出して、拍手喝采を浴びた後の静寂と孤独。三原康裕は14年の長きにわたって(ブランド設立からは24年)、この"狂気のお祭り"の舞台に立ち続けているのだ。そのことを三原と同い年のジャーナリストとして心から尊敬している。

 話は変わるが、パリコレクションを主催するサンディカのホームページには、参加ブランドの最新2021年春夏シーズンの動画とともに、様々なデザイナーのインタビューや過去の作品を紹介するページがある。その中に、2000年から2015年の長きにわたって続いた「ミハラヤスヒロ×プーマ」の動画が上がっているのを発見した。トップページには、私にとって思い入れの深い1足である「MY-7」が!この自粛期間中に、ふと思い立ってメルカリで買い直した(2足も)ばかりだったので、あまりのシンクロ具合に腰を抜かしそうになった。

 この6月、原宿に週2日しかオープンしないスニーカー専門店「MY Foot Products」をオープンし、「フィラ(FILA)」とのコラボレーションをスタートさせるなど、出自の"足関係"で矢継ぎ早に新しい動き見せているミハラヤスヒロ。三原本人は「過去に作ったものに興味はない」というが、サンディカに載っていたプーマのコンテンツのように、これまでの歩みを再評価する動きも高まってきている。あくまで私見だが、ここ数シーズンのミハラヤスヒロの服は過去の集大成だ。ミハラヤスヒロの作ってきた技術と発想に向き合い、それをブラッシュアップさせたものだ。粘土で造形したソールのありそうでなかったスニーカーは今、ミハラヤスヒロの過去を知らない若い世代の間で世界的にブレイクしている。それの"服版"をそろそろ見てみたい、と思っている。

文・増田海治郎
雑誌編集者、繊維業界紙の記者を経て、フリーランスのファッションジャーナリスト/クリエイティブディレクターとして独立。自他ともに認める"デフィレ中毒"で、年間のファッションショーの取材本数は約250本。初の書籍「渋カジが、わたしを作った。」(講談社)が好評発売中。>>増田海治郎の記事一覧

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