首都圏を直撃した台風15号により発生した停電が各地で長引き、東京電力は業績、レピュテーションでダメージを負う。もう一つ手痛いのは、復旧の陣頭指揮をとる次期社長候補に“傷”が付くことだ。(ダイヤモンド編集部 堀内 亮)
● 停電復旧の陣頭指揮をとるのは 次期社長候補と目される人物
「広域かつ長時間に及ぶ停電で、大変ご迷惑をおかけしており、誠に申し訳ございません」。作業着に身を包んだ東京電力パワーグリッド(PG)の金子禎則社長は11日、東京電力ホールディングス(HD)本社で深々と頭を下げて謝罪した。
9日早朝に首都圏を直撃した台風15号は、広範囲で停電を引き起こした。
特に送電線の鉄塔2基や電柱84基が倒壊した千葉県では、11日時点でも40万軒以上が停電したままだ。停電によって、千葉県沿岸部は日常生活や経済活動に甚大な影響を受けている。猛暑も重なり、停電が続く南房総市では熱中症とみられる症状で高齢女性が亡くなった。被災者の不満は募るばかりだ。
東京電力グループの送配電事業会社である東電PGは、東電のみならず他の電力会社からも応援を受け、1万人以上の体制で懸命の復旧作業に当たっているものの、「過去に経験したことのない台風」(金子社長)で、停電の解消に手間取っている。全面復旧は早くとも13日以降になるとみられる。
今回の停電は、東電にとって手痛いものとなった。
2011年の東日本大震災による福島第一原子力発電所事故で、東電グループの持ち株会社である東電ホールディングス(HD)は福島第一原発の廃炉、被災者への賠償、福島の復興という重い“十字架”を背負っている。福島への責任を果たすためには巨額のカネが必要であり、東電は稼ぎ続けなければならない。
東電HDにとって今年度は2017~19年度の中期経営計画「新々総合特別事業計画」の最終年度だが、計画達成は厳しい状況にある。
7月末に福島第二原発の全号機を廃炉にする方針を決め、福島第一原発と合わせて巨額の廃炉費用の捻出に迫られる。
新潟県の柏崎刈羽原発6、7号機の再稼働を収益改善の柱にしていたが、立地自治体が再稼働に慎重な姿勢を示すなど、目標としていた今年度中の再稼働が見通せない事態に陥っている。
また、16年4月から始まった電力小売り全面自由化による競争激化で他社に顧客を奪われ、販売電力量は3年連続で前年割れしている。
そこに台風15号が追い打ちをかけた。
鉄塔や電柱などの設備復旧は特別損失として計上せざるを得ず、停電が長引けば販売電力量の減少につながる。停電の影響を受けた事業者から損害賠償を要求されることも予想され、台風15号による業績へのインパクトは、決して小さくないだろう。
福島第一原発事故で信用を失墜している中で、台風15号への対応の遅れは、東電のレピュテーションをさらに下げることになる。
もう一つ手痛いのは、停電復旧の陣頭指揮をとる金子氏に“傷”が付くこと。金子氏は東電HD次期社長候補と目されているのだ。
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2019-09-12 05:15:00Z
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