3月に開催された「楽天 ファッション ウィーク東京」も終わり、2021-22年秋冬シーズンのコレクションサーキットも終盤。ファッションショーの通常開催が困難になって1年がたち、各ブランドのデジタル発表もぐっと洗練されてきた。デジタルとリアルを融合した試みも増えて表現方法はますます多様化していく一方で、ランウエイショーについては、開催の必要性を問う声が増え続けている。(この記事はWWDジャパン2021年4月5日号からの抜粋です)
今シーズンの東コレには49ブランドが参加し、デジタルやリアルのショーで新作を発表した。緊急事態宣言下で予断を許さない状況のため、ショーを行うブランドは招待人数や座席の配置、マスク着用や入場前の検温の徹底など厳しい制限をクリアして、初めて開催が許される。そんな中でも、19ブランドがリアルのショーに挑んだ。弊紙取材チームも今シーズンは現場とデジタルの二手に分かれ、リアルショーの取材を若手記者に託して4年ぶりに現場を離れると、ショー会場とそれ以外の温度差をより顕著に感じた。
若手記者が興奮気味に会場から戻ってくる一方で、ショー動画の再生回数やライブ配信の視聴者数は全体的に振るわず、周囲の関心も明らかに高くない。そんな日が続くと、ショーを開催する意味について考えることも多くなった。服をただ見たいだけならルック写真で十分だし、むしろバイヤーや顧客などの受け取り手にとっては、作り込んだルック写真の方が親切なのかもしれない。誰でもすぐ簡単に最新コレクションにアクセスできる今、不安定な状況下で限られた人に向けてショーを行う意味とは何なのだろうか。数百万円の費用に対してビジネス的な見返りやPR効果はあるのか、コレクションピースの強いクリエイションの価値は本当に伝わっているのかなど、これまで当たり前に取材していた大好きな現場に対して、懐疑的にならざるを得なかった。
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