【シアトル(米ワシントン州)3日(日本時間4日)=斎藤庸裕、水次祥子】21年のショータイム閉幕-。エンゼルス大谷翔平投手(27)が、弾丸ライナーの先頭先制V弾でシーズンを締めた。「1番DH」で出場したマリナーズ戦の第1打席で46号ソロを放ち、初の100打点をマーク。最後まで諦めない姿勢を見せたが、本塁打王には2本差で届かなかった。登板前後、先発時も打者で出場し、フル稼働の二刀流で駆け抜けたメジャー4年目。米国を、日本を、そして世界に明るい光を照らした。

    ◇    ◇    ◇

勝って、笑顔で終わった。大谷は敵地のフィールド中央で、1年間、戦いをともにしたナイン1人1人と抱き合った。マドン監督、コーチ、チーム関係者とも感謝の抱擁。歴史的なシーズンのフィナーレを、穏やかな表情で締めくくった。

「多く試合に出られたのは単純に楽しかったですし、それだけ試合に貢献できる頻度が高いことは選手としてもやりがいがある。すごい楽しい1年だった」

本音を言えば、もっともっと求めるものはあっただろう。秘める思いを胸に、敵地のファンに手を振り、グラウンドを後にした。メジャー4年目、ようやく二刀流でシーズン完走。「1年間、大きなケガなく出続けられて良かった」と振り返りつつ、「逆に言えば、もっと早い段階でこういう形を作らなきゃいけなかった」と満足感に浸らない姿が、大谷らしくもあった。

才能はある。だが、二刀流を継続できるのか。再燃した懐疑的な見方を開幕から覆してみせた。4月4日のホワイトソックス戦、メジャーで初のリアル二刀流で臨み、第1打席の初球を右中間スタンドへたたきこんだ。投手では最速100マイル(約161キロ)をマーク。大谷劇場は派手な幕開けとなった一方で、冷静に意識していたことがあった。「スタートがどうかより、どういう感じで終わるか。最終的にどうなるかが大事」。1年目から繰り返し、口にする言葉だった。

シーズン終盤まで、本塁打トップで登板を重ねた。それ自体、ベーブ・ルース以来の偉業だった。投打でのオールスター戦出場は史上初。今までにないほどの日の目を浴びながら、満点とはいかなかった。「後半戦はチームとしても上がってこなかったですし、先の見えない試合が多かった。そういう意味ではなかなかきつかったかなと」。勝負を避けられ、打撃の調子も下降線をたどった。消化試合が続く中で最後までもがき、全力プレーを続けたのは、その先に求めるものがあるから。「まずは来年、勝てるように」と。

そして、気持ちは通じた。最終戦の第1打席、捉えた打球は弾丸ライナーで右翼スタンドへ。人さし指を控えめに掲げながら、ダイヤモンドを回った。三塁側ベンチの仲間からは、1年間の感謝を示すかのように拍手でたたえられた。今季を象徴するパフォーマンスで代名詞の「ショータイム」は初の100打点到達で閉幕。届かなかった本塁打王、2ケタ勝利、その先にある優勝-。歴史に名を刻み、夢に近づいた1年が、次なる二刀流ロードの道標となった。