6月16日と17日、東京で開かれた国内最大規模のおもちゃの展示会「東京おもちゃショー」。
定番のおもちゃから、人工知能を使ったものまで、およそ2万点が勢ぞろいしました。
「どう進化? 最新おもちゃ事情」をテーマに、名越章浩解説委員がお伝えします。
【「日本おもちゃ大賞」のコーナーに注目】
東京おもちゃショーは、新型コロナウイルスの影響で、開催は今年が3年ぶりでした。
展示会の中でも特に注目されていたものの1つが、「日本おもちゃ大賞」のコーナーです。
「日本おもちゃ大賞」は、「市場に出て間もないもの」か、「これから市場に出ようとしているもの」を対象に選ばれる賞です。今年は、7つの部門で大賞が選ばれました。
例えば、子供の教育に役立つ「エデュケーショナル・トイ部門」で大賞に選ばれたスピーカーは、専用のアプリで自分の声などを登録し学習させると、AI=人工知能の技術で合成した、そっくりの音声で物語の読み聞かせをしてくれます。
最新の技術が取り入れられたおもちゃが話題となりました。
一方、アクティブに遊べるおもちゃ「アクション・トイ部門」で大賞に選ばれたのは、ミニカー。
車の中にゼンマイが入っていて、いったん後ろに引いてから走らせる馴染みのあるミニカーですが、実は最新版は進化していて、複雑な動きができます。
最新版はゼンマイ式ではなく、中にモーターが内蔵されているのです。
車を引く回数を変えると、ターンやスピンなど、これまでなかった走り方を楽しめるようになっています。
別売りのコントローラーを操作すれば、ラジコンとしても遊べます。
最新のおもちゃでありながら、大人が懐かしいと思えるおもちゃの進化があるのです。
少子化が進む中、幅広い年齢層をターゲットにしたおもちゃの進化は、ここ最近の傾向の1つとなっています。
【おもちゃは“大人の世界の鏡”】
そもそもおもちゃは、「大人の世界の鏡」と言われていて、時代を反映し、常に変化してきました。
大人が使っているものを、子供は触りたがります。それをおもちゃにし、そこからヒット商品が生まれるという関係性があります。
その変化を見ていくと、その時代の「今」が見えてくるのです。
例えば、今回、「ベーシック・トイ部門」の大賞に選ばれたのは、スーパーに買い物に行くと最近よくみるようになった自分で会計する「セルフレジ」のおもちゃ。
付属されている牛乳とかカレーのルーと書かれたおもちゃのバーコードを読み込ませると、「ピッ」という電子音とともに金額を読みあげてくれます。
さらに、支払方法も現金、クレジットカード、スマホ決済から選べるようになっていて、現代社会をよく反映しています。
このほか、大賞に選ばれたおもちゃではないものの、目を引いていたのが、本物そっくりな掃除機やドライヤーなどのおもちゃです。
いずれも電池で動き、このうち掃除機は小さな紙であれば吸い込んでくれます。
大人と同じものを使ってみたいという子供の憧れを分かりやすく形にしているおもちゃです。
【今後の進化は?】
では、今後はどんな進化があるのでしょうか?
多様な進化が考えられている中で、私は2つのキーワードに注目しています。
「デバイス型トイ」と「サステイナブル・トイ」です。
このうちデバイス型トイとは、パソコンやスマホ、スマートウォッチのような形や機能をもったおもちゃのことです。
例えばパソコン型のおもちゃは、小さな子供の頃から、パソコンの操作に慣れていけるように工夫されています。
想像以上に多機能で、例えばプログラミングという画面を開き、キャラクターを右に動かす、ジャンプさせるという動作を自分で設定すると、その通りにキャラクターが動きます。シンプルですが、プログラミングの基本が学べます。
このほかにも英語や算数などを遊び感覚で学べる仕組みになっていて、さらに学習したら、画面上でコインなどのご褒美がもらえるようになっています。
子供たちに達成感を味わってもらうことで、学習意欲を高めようという仕掛けになっているのです。
大人が使うパソコンと違って、実際にインターネットにつながっている訳ではないので、子供たちが詐欺まがいの広告などを誤ってクリックする心配はありません。
昨年度の(2021年度)おもちゃ業界の市場規模は、8946億円。
新型コロナの影響で「おうち時間」が増えた影響などにより、前の年度より8%あまり増え、この20年で最高を記録したのですが、このパソコン型のおもちゃは、「昨年度の国内玩具市場をけん引し、売り場に大きく貢献した」として、「ヒット・セールス賞」を受賞しています。
今後、こうしたデバイス型トイは、業界の市場での割合が高まっていくのではないかと考えられているのです。
もう1つのキーワード「サステイナブル・トイ」。
持続可能な社会の実現を目指す考え方はおもちゃ業界でも重視されていて、 環境に配慮した「サステイナブル・トイ」が最近増えています。
例えば、「ブロック」のおもちゃの材料に使われているのは、50%以上が廃棄米などのお米。
実際、嗅いでみると、ほんのり、お米の香りもします。
ブロック遊びで子供の創造力を高めつつ、親が会話の中で環境保護の大切さを教えるきっかけにしてもらおうという狙いもあります。
一方、使用済みのペットボトルが活用できるおもちゃもあります。
ペットボトルのキャップを入れ、それを弾にみたてて撃つおもちゃです。的は、使わなくなったペットボトル。
子どもたちが、遊ぶためにペットボトルと、キャップを分別しないといけませんし、床が汚れてはいけませんから、結果的にボトルを洗うことにもつながります。
ペットボトルの分別を遊びながら学べるというわけです。
時代とともに、おもちゃの役割も多様化しているのです。
そして、「子供の夢がふくらむ」おもちゃの役割は益々重要になってきています。
最近では、災害が発生した際の避難所で、子供たちの心の癒しになるようにと、配布するおもちゃの備蓄も行われるようになっていて、おもちゃの持つ力が、再認識されています。
私たちの暮らしと心を豊かにする大切な文化として、さらなる進化を期待したいと思います。
(名越 章浩 解説委員)
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