<構造改革や知的財産権の保護、何より製造業を取り戻すことなど根本的な課題はすべて先送り>
アメリカと中国はそれぞれ、貿易協議の第1段階の合意に達したと発表した。合意の内容も、それがいつ署名され、承認され、実施に移されるかも不透明だが、貿易戦争中の両国の緊張緩和が現実味を帯びてきたように思われる。
ドナルド・トランプ米大統領は12月13日、ツイッターで米中両国が「非常に大きな」合意に達したと述べた。内容的にはこの1年半の間に何度か浮上したものと同じで、中国が米製品の輸入を増やす代わりに両国が関税の一部を緩和し、アメリカが15日に予定されていた新たな関税の発動を見送るというものだ。米通商代表部(USTR)は詳細を明らかにしていないが、合意には「意義深い、完全実施可能な構造的変化」が含まれるとしている。
中国政府も記者会見を開き、合意に達した点については認めたが、トランプが言うような、中国が経済における「構造的な」変化を受け入れたといった点は認めなかった。構造的変化とは工業分野での政府の補助金や中国の工業発展政策に終止符を打つといった項目を含み、これまでの交渉を通じて一切、中国が認めてこなかったものだ。
以下では、今回の合意に関しこれまでに明らかになっている部分について、3つの重要なポイントを取り上げる。
<さらなる関税は回避した>
今回の合意により、アメリカは15日に予定されていた、約1600億ドル分の中国製品を対象にした新たな大型関税の発動を見送った。これで米中両国の経済に影を落としていた大きな脅威が消えたことになる。
新たな追加関税は消費財に焦点が当てられており、主にアメリカの製造業が打撃を受けたこれまでの追加関税と異なり、影響は大きいとみられていた。両国が合意に達したと伝えられた12日、ニューヨーク株価は過去最高値を記録。その勢いは翌13日まで続いた。
合意にはこれまでの関税の引き下げも含まれており、アメリカはこの夏に発動した追加関税を半分に引き下げる方針だ(第一弾の追加関税についてはそのまま)。これにより、中国製の生産財(生産機械や原料・部品)に依存している米製造業はある程度は救われるだろうし、ここしばらく減少が続いている中国からの輸出も多少なりとも勢いづくだろう。
関税を引き下げる代わりに、アメリカは中国から一定の譲歩を引き出すことになる。つまり米製品の輸入を増やすと言うことだ。これには中国側が認めた農産品はもちろん、トランプの言うように原油や天然ガスも含まれるかも知れない。また中国は、知的財産侵害への取り締まり強化も公約した。
「休戦は非常に大きな意味を持つ」と、ピーターソン国際経済研究所(PIIE)のメアリー・ラブリーは述べた。ことに、新たな追加関税の発動が回避されたのは大きいという。「通商交渉の結果、崖っぷちから引き戻された」
2019-12-16 10:35:52Z
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