感染者の数が全国で増え続けている日本。
4月20日(月)のテレビ朝日『羽鳥慎一モーニングショー』では岡田晴恵・白鴎大学教授がいつも通り警鐘を鳴らした。
テレビの生放送の面白さは番組側が予め用意した通りに出演者が話を進めるとは限らないことにある。
『モーニングショー』はそうした生放送でのトークを展開するのがとても上手だ。
この番組が同時間帯で視聴率トップになっているのは、NHKも他の民放の情報番組が「段取り」をきっちり決めて「予め出来ている台本」に沿って進行が行われている感じが強いのに比べて、『モーニングショー』は司会の羽鳥慎一アナウンサー自身もテーマにきちんと勉強していて「トークの振れ幅」に余裕があるせいだと思う。多少脱線しても司会者として対応できるのだ。それゆえ、ゲストらが話しやすく、熱を帯びた真剣なトークになっていく。もともと予定調和ではない面白さがあったのだが、新型コロナ感染拡大というタイミングで岡田晴恵という人を捕まえてますます番組そのものがスリリングなものになっている。
残念なことにネット記事などを読んでも岡田教授が話した詳しい内容までは書いていないことが多い。
だが注意深く見ると、岡田教授はこの番組ではかなり伸び伸びと自分自身の問題意識を披露していることが分かる。
この日の岡田教授の解説トークも真剣さがいつも以上でまさに番組進行の段取りを超えたものだった。
「感染者の総数だけじゃなく、何を指標にするかというと、死亡者の数なんです」
岡田教授は自分のノートか何か書類を見ながら口頭で読み上げた。
「3月1日~10日は1日あたりの死者は0.5人」
「11日~20日は1日あたりの死者は2人」
「21日から30日は1日あたりの死者は2.3人」
10日ごとの死者数を1日あたりで計算した数字だ。
番組でも岡田教授と打ち合わせていなかったのかパネルやフリップなどにはこの数字は示されない。
「だんだん上がってきます」
そう前置きして岡田教授は続けた。
「3月31日から4月9日は1日あたりの死者は4.2人」
いきなり倍近く上がった。
「で、ちょっと私が怖いのは…」
少し言いよどみながら次の10日間の数字を読み上げた。
「4月10日~18日は
1日あたりの死者は12.5人」
さらに3倍に跳ね上がった。
ここに来て死者の数が急増している。
(岡田晴恵教授)
「これっていうのは一つのメルクマール(指標)になると思うんですね。
けっして楽観できるような状況ではないと私は思っています」
0.5人→2人→2.3人→4.2人→12.5人
岡田教授が口頭で読み上げた10日ごとの1日あたりの死者の数の推移である。
文字に書いて推移を眺めてみると、その怖さが伝わってくる。
すでに日本でも毎日12人以上の人たちが新型コロナで死亡しているのだ。
岡田教授は、日々発表される「新な感染者」の数がそもそも構造的に少なくなる理由があると警告した。
東京都が発表する新たに判明した感染者の数(4月17日201人、18日161人、19日107人)も、PCR検査件数には限界があって進んでいないことや症状がひどくならないと検査してもらえないことなどで、この数字が本当の意味で感染者を反映したものになってないと訴えた。
日々のPCR検査の中には一度陽性と判定されて入院した人も含まれる。今のルールでは、2度のPCR検査で陰性にならないと退院できないので日々の検査の数にはそうした一度陽性になった人への検査も含まれるのだという。
このため日々のPCR検査がどこまで「新規の感染者」を捕らえるものになっているのかは疑わしいのだと説明した。
PCR検査を大がかりに実施した韓国方式だったら見つかった可能性がある「新規の感染者」が、検査も受けずに自覚もなくウイルスをばら撒いている可能性を示唆していた。
「軽症の人や無症状の人が野放しなわけでございます」
と発言している。
それだけ市中感染(クルーズ船や病院内の感染などでなく、一般の人が日常的に利用する空間での感染)が広がっていると思われるが、私たちはそれを裏付ける正確なデータを持っていないというのだ。これは韓国のようにPCR検査の体制を作ってこなかった政治や行政のツケがここに来て出てしまっているというほかはない。
番組では感染の経路に変化が出ているとして、東京都の新型コロナ対策担当者が次のように発言したことも紹介している。
(先週土曜・東京都担当者)
「感染場所について夜の街に関係ある人は全体の2.7%」
「濃厚感染者の4分の1が家庭感染」
(岡田教授)
「これは市中感染が通常に起こり得るということですね。
そうすると家庭内で当然、(外出)自粛でいるわけですから、かえってそこで感染者を増やしてしまうリスクがある。
だから家庭内にウイルスが入ってきている、市中感染が(そこに)ある、ということを想定すべきなんです。
本当に自粛だけで、行動規制だけで(感染者数が)下がり得るのか、ということになる」
この日はフリーアナウンサーの赤江珠緒が夫婦で感染した話題をスタジオ展開していた。
テレビ朝日でキャスターの富川悠太アナが感染した『報道ステーション』のスタッフであるの夫に症状が出て先に感染が判明した。
妻である赤江も他人に感染させるリスクがあると判断して、担当するラジオ番組の出演を自粛して自宅に留まっていたが、その後に赤江自身の感染が判明して公表していた。夫婦には2歳の子どもがいるが、PCR検査の結果、この子は陰性だという。しかし、ウイルス感染で共倒れになった夫婦は現在、感染していない子どもを親や親戚などに預けずに自宅で子どもの面倒を見続けている。
番組では赤江が以前発信していた“悩み”を取り上げた。
(赤江珠緒)
「わが家の場合は親が共倒れになった場合の子どもの面倒は誰がみるのかという問題があります」
赤江夫婦にとっての問題は、子どもの預け先がないことと、もし預けてしまうと(もし子どもがウイルスを持っていた場合に)親や兄弟にうつすリスクがあるから、自分たちで面倒を見るしかないというものだった。
こういう状態について羽鳥から話を振られた岡田教授は専門知識で本領を発揮した。
(岡田教授)
「私はこう思っていたんですよ。はじめからPCR検査をどんどんやってくれと言った理由というのは、それをやっていけばすでに無症状で陽性になったとか、軽症で陽性になったとか、(ウイルスの)抗体を持っている人がある程度分かってくるわけです。
そういう(抗体を持った)人は実はこういうときに働けるわけです。
そういう人材が確保できていれば、たとえば(赤江夫婦のように)こういう状態だからと言えば、
すでに感染して抗体が陽転しているような保育士さんが(赤江夫婦の家に)行ってくれるようなシステムができたかもしれないし、
たとえば病院その他で働くことができる人も出てくるかもしれない。
そういう場合はPPE(感染を防ぐための防護服、マスクや手袋などの防護具)も要らないかもしれない。
ただこのコロナに対してはどのくらいの抗体を持っていれば再感染しないかというのはグレーなんで。
あくまでも一般的な感染症ではそうだということなんですけれども。
やはり新型インフルエンザのパンデミックのときには家族がうち並べて寝る、というのが典型的な状況でございます。
ですから赤江さん、非常に辛いと思うんですけど、なかなか良いアイデアが私にもない。
ですから感染して抗体を持っているよという一種のパスポートを発行するなんていう国が出てきてるんです。
それは(ウイルスの抗体を持った人の)労働者としての確保ということもできるわけです。
こういうことも想定した対策をもっとやっておくべきだったと思います」
すぐに実現は無理かもしれないが、新型コロナウイルスに対応する策が明確には見つからない以上、ウイルスの抗体を持つ人を確認することも重要な対策だと思わせる解説トークだった。
翌21日(火)の『モーニングショー』。
先日に岡田教授がトークで触れた「抗体」について各国で検査が進みつつある状況が伝えられた。
米カリフォルニア州では大規模な「抗体検査」を実施したという。検査自体は血液を少量採取して15分で判明するという。
スタンフォード大学などの研究チームが検査の結果から、実際の感染者は確認された症例数の50倍~85倍以上の人がウイルスに感染した可能性があるという推測を発表した。
この結果を岡田教授にぶつけたところ、けっして大袈裟ではない数字だという。
(岡田教授)
「そうだろうなと思います。症状が軽かったり、無症状だったりという人がけっこうな割合でおります。
PCR検査を積極的にやらなければこれくらい(実際の感染者は確認された人の50倍~85倍以上)だろうと思います。とにかく治ったという人は『IgG抗体』を持っている。それを見れば過去にかかったかどうかわかる」
研究チームのこの推計は「全住民の2.5%~4.1%がすでに感染したと推計」したことで人口200万人なので4万8000人~8万1000人の住民が感染したのではないかという推計値を出している。
これを見て岡田教授は次のように予測した。
(岡田教授)
「(ウイルスは)集団で60%から70%の人が免疫を持つまで免疫を持つまで流行するので
たとえばここはここ(カリフォルニア州)はこれから流行する可能性が大きい」
「抗体」について岡田教授はいつも以上に饒舌だ。自身の専門領域なのかもしれない。
(岡田教授)
「日本でどれくらいの人がこの抗体を持っているのかというのが私のいまの興味でもあります。
これをやることによって、その集団でどれくらい免疫を持っているのか、政策のための基礎データになる。
逆にこの基礎データがないと政策を決めるのに心理的なハードルが高い」
番組では他の国でも抗体検査を実施している例を紹介した。
【ドイツ】
・ドイツ北部ガンゲルト市
約400世帯1000人を検査
↓
住民の約15%がすでに感染していたと推定
(岡田教授)
「(この15%の人は)もしかしたら肺炎になっていた人もいたかもしれない。
軽症の人もいたかもしれない。とにかく15%という数字。これはけっこう多い。
ただ(集団の免役に必要な)60%に届きませんから、気温が落ちてくれば、(このガンゲルト市では)また第2波が来る可能性があるわけすね。
(また米カリフォルニア州で確認された症例数の)50倍~85倍以上(の人がウイルスに感染した可能性)という数字は重く受け止める必要があると思います。日本にしても。日本は調べないと分からないですけど」
(羽鳥キャスター)
「目に見えている数字以上にと?」
(岡田教授)
「そうです。そのコロナの原因というのが無症状と軽い人が多いというのがバックグラウンドとしてこういうものを生み出すということ」
(羽鳥)
「広めていくということ…」
絶妙な羽鳥慎一キャスターの合いの手だ
冒頭で筆者は羽鳥キャスターがそのテーマを勉強していることを挙げたが、こうした何気ない「合いの手」の言葉にも羽鳥アナの勉強ぶりが透けて見える。きちんと勉強して理解していないとこうしたアドリブのようなタイミングで「合いの手」を入れることなどできるものではない。
この後、羽鳥キャスターが抗体検査を世界各国で続々と導入しようとする動きについて紹介する。
【米ニューヨーク州】
4月20日から
一日最大1万件の抗体検査
↓
今後
一日2万件に拡大へ
ニューヨーク州クオモ知事の言葉も紹介した。
(ニューヨーク州クオモ知事)
「抗体検査をこの国のどこよりも積極的に取り組みたい」「検査することで我々が直面している現状が見えてくる」
日本はどうなのか?
番組では取材をもとに次のように紹介した。
(厚労省関係者による)
「今月中にも首都圏で数千人規模で抗体検査実施をめざす」
(羽鳥慎一キャスター)
「やはり抗体検査をやる意味というのは、今後の経済政策を含めた指針を示す判断材料の一つになる?」
(岡田教授)
「ですから東京でどれくらいの人が過去にかかったかということが分かるわけですよね。
そうすると(その数が)少ないならばこれからまた流行が来る可能性がありますし、(感染が)激しくなる可能性がある。
ある程度の(数の)人がもし抗体陽転したとしたら、これは良い明るい材料なのかもしれない。
PCR検査が滞った以上、このデータは必ず取るべきですね。
市中感染率も調べる。ここら辺が基礎データになると思います」
岡田教授はやや興奮気味に一気に話し続けた。
このことはすごく大切なことだといわんばかりに。
筆者も聞いていたときには正直なんとなくしか理解できなかったが、こうやって彼女の言葉を書き出しながら正確な意味が理解できた。
おそらく、出演者も番組のスタッフも同時並行で彼女についていくのは大変なことだろう。
それをやり続けているスタッフがいるのは番組の強みだろう。
この日の『モーニングショー』の中では岡田教授はたびたび市中感染が広がっていることへの強い危機感を表した。
警察が路上などで死亡した人を「変死」などとして扱っていた遺体について後で改めてPCR検査で調べてみたら、11人が新型コロナウイルスに感染していたと判明したというニュースについて次のようにコメントした。
(岡田教授)
「これは路上死とか、中国の武漢でこういうことがあって動画などに上がったりとかありました。
まして日本でそういうことが起こるんだなあと、ちょっと実感しているんですけど、
こういうことが起こってくるということは市中感染が上がっているんだろうと。
それからカウントされないコロナの死亡者がいるということはよく肝に銘じなければいけないと思っています」
前日、岡田教授が口頭で示した死者数の推移を東京都で集計したグラフを岡田教授が解説した。
【東京都 10日ごとの死者数の推移】
2月20日~3月1日 1人
3月2日~11日 1人
3月11日~21日 2人
22日~31日 12人
4月1日~10日 24人
11日~20日 37人
(岡田教授)
「感覚的にはなんとかく分かるんだけれども(感染者数の)グラフを見るとそうでもない(ように見える)。
でも死亡者数を見るとやはりかなり上がって来ている。
で。オーバーシュートという言葉があったじゃないですか?」
(羽鳥キャスター)
「感染爆発ですね?」
(岡田教授)
「そうです。それが起きていないの?というのが不安になるわけです」
専門家会議で感染者の総数が倍になるのが2、3日になると「オーバーシュート」と定義しているが、今(東京都の感染者は)3000人くらいいるのでそれが2、3日で6000人にならないとオーバーシュートにはならないのにそもそもPCR検査が進んでいないと指摘する。
3日で6000人になるとして、1日あたり2000人ずつ感染者をカウントすることを想定すると、そもそもPCR検査数は東京都でだいたい500件とかの件数なので、
「今の検査体制ではオーバーシュートは(実際には起きていたとしても)検知できない」
と説明した。
岡田教授は「私たちに向けて行われる対策だとか、私たちが今いる立ち位置の実感とかをこの数値では見られない」と言う。
では感染者数の推移ではなく、何の数値によって私たちは感染拡大の実態を実感すべきなのか。
(岡田教授)
「やはり死者数のグラフですね。スタッフが作ってくれたんですけど、
これを見ときに私はこれを今後、きちんと指標にしていかなきゃいけないと思いました」
東京都の死者数の推移を示した棒グラフ。
これは前日、パネルやグラフもなしで岡田教授が口頭で説明したようなデータを図解したものだった。
実際の出演者に合わせてこうした小道具も用意するとは、かなりきめの細かい気の利いたスタッフがいるのだろうと想像する。小さなことのようだが、筆者のテレビ時代の経験から言ってもなかなかできることではない。
(岡田教授)
「韓国の事例は一度は感染者が出ましたけれども、たくさんの検査をしながら封じ込めて行っている。
だから韓国では医療崩壊も起きていないし、死者数も増えていない。こうやって対策を緩めればまた患者さんが出てくるかもしれませんが、そこでまたきちんと対策をやっていく。
ある意味、教科書通りの対策を打っていたなあという気がする。
私は東京で今、市中感染が非常に広がっているんじゃないかと思う。
昨日、家庭内感染が増えている話がありましたけど、そうなると、行動制限をしても市中感染が広がっていて家庭内にウイルスが侵入していると、感染者数の増加が止まらない可能性がある。
それがすぐに数字に反映されないとすると私たちは大事なことを見逃してしまうんじゃないか。
それが心配なんですね」
岡田晴恵教授の本気の訴え。
このままでは日本中で死者があふれてしまいかねない。
その危機感が彼女の切実な語りで伝わってくるから、多くの人がこの番組で新型コロナの情報を見ようとするのだろう。
いつしかレギュラーコメンテーターの玉川徹や石原良純らはリモートでの出演に退き、羽鳥キャスターと岡田教授だけがスタジオで話し合う構図が定着するようになった。
番組が実施した行動制限をめぐるアンケート調査ではそれなりの割合の人たちが、人との接触を避けて行動制限を意識的に行っていることが分かった。だが、岡田教授は専門的に見ると買い物が心配だという話をした。
(岡田教授)
「ウイルス学的に心配しているのは買い物なんですね。かなりスーパーとか商店街とか混んでいる。
これを緩和しないと一大ウイルス伝播場所になるかもしれない。
無症状の人もおられますので。
ですから、可能な地域とか可能な場合のスーパーであれば、駐車場販売を、生活必需品に限ってもう積極的にやっていかないと。
今後はスーパーで感染る(うつる)。
ということになりかねませんのでそこは前向きに検討していただきたい。
屋外で販売する。屋外だったら、室内と違って、充満はしませんから、エアーゾルとか飛まつだとかが劇的に緩和します。
それからセルフレジを導入する。
それができない場合もありますよね。都心とか。そういう場合は入場制限をする。
とか『触ったものは絶対に買ってください』とか、そういう強い対策をしませんと、
この買い物というところがリスクになる。
今後、市中感染が上がりますので」
岡田教授がこの日、主張したことはたまにしかスーパーなどに行かない筆者にとっては実現が難しいことのようにも聞こえた。
しかし、今そこまでのことをしないと状況がもっと悪くなってしまうということをテレビを通じて伝わった。
他の番組に出演するときの時間制限がある中での話し方と違って、多少ヒートアップした感じの岡田教授の熱い語り。たっぷりと時間を取って羽鳥アナが絶妙な質問と合いの手を入れて、スタッフも努力して彼女の見せたいデータをグラフにする。
それがこの『モーニングショー』のコロナ報道の最大の強みと言っていいだろう。
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April 21, 2020 at 05:32PM
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「今後はスーパーの買い物で感染る!」岡田晴恵教授が『モーニングショー』で本領発揮する理由(水島宏明) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース
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