● 赤い蜃気楼か 青い蜃気楼か 「レッドミラージュ(赤い蜃気楼)」 いよいよ11月3日に迫った米大統領選挙を前に、こんな言葉が米国のマスコミで使われるようになった。もちろん光の屈折で存在しない景色が空中や地平線近くで見える現象ではない。 【この記事の画像を見る】 ペンシルバニア、ウィスコンシン、ミシガンなどの激戦州で開票が始まると赤色がシンボルカラーの共和党のトランプ大統領がまず優勢となるが、郵便投票の集計が進むにつれてそのリードは蜃気楼のように消えてシンボルカラーが青色の民主党バイデン候補が勝利するというシナリオである。 それとは逆に、投票日前から郵便票や期日前投票の集計が行なわれている州ではバイデンが序盤先行する「ブルーミラージュ」現象も起きることになるだろう。 問題は赤青どちらの蜃気楼が最後まで消えずに残るのかだが、その主戦場は大統領選で常に最も注目されるフロリダだ。全米支持率で劣勢のトランプにとって絶対に勝たなければならない州である。 だからトランプは昨年秋に税金逃れも兼ねて住民登録をニューヨークからフロリダ州に移している。 フロリダは所得税、相続税ゼロ。金融犯罪捜査も手ぬるい租税回避地。同州最大の都市マイアミのすぐ北側にはトランプの名前を冠したホテルやマンションがずらりと建ち並び、日米首脳会談の開催地として日本でも有名になったトランプご自慢の別荘「マール・アラーゴ」もフロリダ州パームビーチにある。
● フロリダ州司法長官に トランプが多額の寄付 早い時期からトランプはフロリダ州に目をつけ、人脈開拓にも熱心だった。例えば、トランプが創設した不動産スクール「トランプ大学」の詐欺問題を巡り、フロリダ州司法長官パム・ボンディに多額の寄付をしていたことが明らかになっている。さらには大統領になって自らに対する弾劾裁判の可能性が浮上すると、すぐさま同氏を特別顧問に雇い入れた。このあたりがトランプのずる賢いところだ。 フロリダは選挙開票の不手際でも知られている州だ。2000年のブッシュ対ゴア米大統領選では、再集計を巡って泥沼の法廷闘争の末ようやく連邦最高裁判断でブッシュの勝利が確定した。これも再選を狙うトランプには好都合だ。 民主党支持者が圧倒的に多いといわれる郵便投票を「選挙詐欺だ」と言って有権者に疑問を抱かせ、2000年の法廷闘争の再現を狙っているのだろう。現在は9人の最高裁判事のうち6人がトランプに有利な保守派である。 開票半ばで一方的に勝利宣言をして郵便投票の開票を打ち切るという暴挙に出る可能性もある。マフィアとの繋がりもささやかれる弁護士を使って訴訟を連発して相手に圧力をかけるのは不動産業時代からのトランプの得意技だからだ。 だが、今年のフロリダ州当局はこれまでとは違う。新型コロナウイルス蔓延で郵便投票や期日前投票が記録的に急増していることを受けて、最新の投票計数機を設置し、票の読み込みがすでに始まっている。投票の締め切りである11月3日午後7時とほぼ同時に集計結果を出せる見込みだという。 「フロリダ州でバイデン氏が勝てば、それで(大統領選の)決着がつく。かなり早い段階でわかると思う」 ブルームバーグ通信社の取材にフロリダ国際大学のキャサリン・デパログールド政治学教授はそう答えている。 確かに状況はトランプにとって悪化の一途だ。「こんなものすぐに消える」と豪語していたコロナウイルス大流行はさらに深刻化して自らも感染、入院。頼みの綱の好調だった経済も暗転。株価は急落。高齢者、若者、女性、黒人、ヒスパニックの支持も期待できない。大統領選と同時に行なわれる議会選挙で落選の憂き目に遭いたくない共和党議員たちも次々と反トランプに転向し始めた。
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